マンションの重い扉を開ける
むっとする 暑さだ
足許に光る ガラスの破片を
拾おうと する背に
「そのままにしておいて」と
かん高い声

男の乱暴を そのまま
私に見せたいのだと
女は 私をここに連れてきた
欠けた茶碗 皿 小鉢
ゆがんだ家具 ちぎれたカーテン
男がした狼藉だから
片づけるのは 男だという

多くの女達は 黙って片づけてきた
投げつけられた物も 言葉も
一緒にのみこんで
女は ゆったり海のように
男を つつんできたものだ

マニキュアした指が
上手に煙草を吸う
私の説得も ポイと灰皿に落とされて
とりあえずの品物を 両手にかかえて
女は 出て行った

疲れて部屋のベットに腰かける
このベットに流した 男と女の汗
汗の行方に腹が立って ベランダに出る
ビニール袋が三つ
容赦ない陽差しに 腐敗は始まっていて
ベランダは すえた匂いで 一杯だ





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